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片思いをしている時に共感できる古典和歌


片思いをしている時に共感できる古典和歌

片思いをしていると、楽しいことばかりではなく、辛いことや恥ずかしいこともたくさんあると思います。

「こんなに辛い思いをしてバカみたい」

「もしかして私だけがこんなに辛いのかなぁ」

なんて感じてしまうことがあるかもしれません。

でも、今も昔も片思いの気持ちはそんなに変わりません。

たとえば、日本の古典和歌にも、片思いの気持ちを書いているものがたくさんあるんですよ。

というわけで今回は、片思いの気持ちを詠んだ古典和歌をご紹介します。

万葉集の歌から

『万葉集』は現存の日本の古典和歌集としては最古のものです。

成立は759年頃とされていますので、なんと1256年も前のもの。

片思いについて詠まれた歌はたくさんありますが、今回はその中から二つほどご紹介します。

●思へども 験もなしと知るものを 何かここだく 我が恋ひわたる
(坂上郎女)

「意味:どんなにあなたを想っても仕方がないとわかっているのに どうしてこんなに 恋しく切ないんでしょう」

「験もなし」は効き目がないという意味から、「仕方がない」ということです。

想ってみてもどうしようもないとも思うのに、片思いの切ない気持ちを止められないなんてことがあると思います。

そういった気持ちを詠んでいるのがこの歌。

現在の私達と、全く同じではないでしょうか。

この歌の作者は女性ですが、もちろん、片思いで苦しむのは男性も同じです。

●ますらをと 思へる我や かくばかり みつれにみつれ 片思をせむ
(大伴宿禰家持)

「意味:たくましい男だと自負していたのに こんなにも 恋やつれするほどの 片思いをしているよ」

「ますらを」は「たくましい男、立派で男らしい男」という意味です。

自分自身では、たくましい男だと思っていたけれど、こんなにも片思いのせいでやつれてしまったということですね。

今まで「自分自身はこういう人間である」と思っていたものを、片思いがガラリと変えてしまう――そういうことってありますよね。

古今和歌集から

『古今和歌集』は905年に成立した和歌集です。

その中から小野小町の歌をご紹介します。

●思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを
(小野小町)

「意味:あの人のことを想って寝たからあの人が夢に出てきたのかなぁ。夢と知っていれば、起きないでいたのに」

片思いの人のことを想いながら寝て、その人が夢に出てくる……。

その人に会えてとっても嬉かったのに、起きてみれば夢だったとわかって、なんだか胸にぽっかりと穴が開いたような寂しい気分。

小野小町は美人で恋多き女性といったイメージが強いですが、そんな彼女もこういう気持ちを抱えていたなんて、親しみを感じますね。

その他平安時代の和歌から

●つれづれと 空ぞ見らるる 思ふ人 天降り来むものならなくに
(和泉式部)

「意味:物思いにふけって空を見てしまう。私の想い人が、天から降ってくるわけでもないのに。」

恋をしていると、いつの間にかぼーっとする時間が増えてしまうもの。

そうしてるからって、好きな人に会えるかというと違うのですが、それでも彼を想ってぼんやりしてしまうのです。

和泉式部は平安時代の歌人で、恋歌を多く残していますが、特にこの歌には彼女の実感が込められているように思いますね。

●しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
(平兼盛)

「意味:隠していたつもりでしたが、とうとう顔色に出てしまったようです。『もしかして、恋をしているんですか?』と人に尋ねられてしまうほどに。」

隠していた気持ちだったのに、いつの間にかそれが出てしまう、なんてことありますよね。

恋の気持ちが強ければ強いほど、それって自然なことです。

たとえ片思いでも、人に「恋してるの?」尋ねられたら、笑顔で「うん!」と言える恋だといいですよね。

番外編:与謝野晶子

与謝野晶子は明治の歌人。

ですので彼女の歌は古典和歌ではないのですが、大胆で素敵なものが多いのでご紹介しておきます。

●やは肌の あつき血汐に ふれも見で さびしからずや 道を説く君
(与謝野晶子)

「意味:この私の熱いやわ肌に触ってもみないで、道徳的なことばっかり言ってて、寂しくないの、あなた?」

自分のほうを向かない男性に対して、大胆にこう詠んでいます。

片思い中に、相手の男性の態度にやきもきしたことのある人もいるはず。

時には少し大胆になって、小悪魔みたいに振る舞うことも必要なのかもしれませんね。

最後に

今回は共感できそうな古典和歌をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

古典というととっつきにくいイメージがありますよね。

でも、肩の力を抜いて読むと、今の私たちにも共感できる内容のものがとても多いということを、おわかりいただけたかと思います。

今回の内容に興味をもった人がいれば、まずは現代語訳の和歌を読むところからトライしてみてください。

そうしてると不思議なことに、「この人の歌って特に共感できるなぁ」なんて、お気に入りの歌人ができたりするものです。

そう、お気に入りのアーティストといっしょです。

「なんだ、この人も今の私と一緒だったんだ」と思えれば、自分の片思いに対しても力を抜いて頑張れるはずです。


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水嶋英美里

水嶋英美里

ライター。文学系の大学院を修了しており、国語科の教員免許持ち。コラムは根拠のないテクニック紹介にならないよう、「なぜこうすれば結果が得られるのか」といった部分まで踏み込んで書くことが得意。猫と文学とカモミールティーを愛する。