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メサイアコンプレックスとは?具体例で分かる問題点


メサイアコンプレックス

人に親切にされると嬉しいですよね。そして親切にした側も、相手に感謝の言葉を言われると嬉しくなるもの。

しかしもしも、相手の感謝の気持ちだけが欲しくて親切にしている人がいるとしたら?

その人は「メサイアコンプレックス」と言って、関わるとちょっとやっかいな人かもしれません。

今回はこのメサイアコンプレックスについて、具体例を示しながらわかりやすく解説します。

メサイアコンプレックスとは?

メサイアコンプレックスの、「メサイア」とは「救世主」のことで、「救世主願望」とも言われます。

このコンプレックスを持つ人達は、自分が救世主になるために困っている人を助けようとします――このように言うと、いい意味に聞こえてしまうのですが、この親切は「自分を有能で価値のある、優位な存在にさせるため」に行われるのが特徴です。

彼らはターゲットを見つけて親切を行い、彼らから「感謝の言葉」などの見返りを期待します。

そして

「これだけの感謝が得られたのだから、自分には価値があるんだ。有能な存在なんだ!」

という自信を得て、精神を安定させようとするのです。

これこそがメサイアコンプレックスの人の狙い。

ターゲットにされた方は、親切の押し売りをされ、時に依存させられ、メサイアコンプレックスの人に自信を持たせる役割を担わされるのです。

メサイアコンプレックスを持つ人は、「人の役に立ちたい」という言い分で、感謝されやすい職業につきたがるとも言われます。

たとえば、看護職、介護職、カウンセラー、医師などなど……(もちろんごく一部の人でしょうが)。

メサイアコンプレックスの人はトラブルを引き起こす!

メサイアコンプレックスの人が社会的に必要とされる職業につくこと自体は、悪いことではありません。

たとえば、「人に感謝されたい!」という思いが強ければ強いほど仕事に熱中したメサイアコンプレックスの医師が、素晴らしい技術を獲得するということもままあるでしょう。

しかし、それ以上にメサイアコンプレックスはトラブルを引き起こしがちです。

メサイアコンプレックスの人が引き起こすトラブル

トラブル1、親切を押し売りして、過剰に感謝を求めるが、実は相手のことはどうでもいいので、相手と揉める

メサイアコンプレックスの人から親切を押し売りされたあげく、過剰な感謝を求められることがあります。

例を挙げましょう。

例1、メサイアコンプレックスの彼氏①
彼氏「君が寂しいんじゃないかと思って、終電で駆けつけたよ」
彼女「別に来てほしいなんて言ってないし、寝ているところを起こされて迷惑なんだけど」
彼氏「君のためを思ってきたのに、なんて言い草だ! そんな君を見捨てない僕ほどのいい彼氏は他にいないのに! 少しは感謝しろよ!」

終電もなくなった深夜、自宅でこんな風に騒がれたらひとたまりもないですね……。

この彼氏は「君が寂しいだろうと思ったから、親切な僕が駆けつけたよ。ほら感謝しなさい」という態度ですが、彼女の方はそんなことを求めていないので感謝もしません。

メサイアコンプレックスの彼氏にはそのことが信じれず、激しい言葉で感謝という見返りを求めていますね。

彼氏は彼女のことを考えて行動しているのではなく、あくまでも感謝という見返りが欲しいだけなので、彼女の気持ちを踏みにじっても平気なわけです。

このような場合の大半は、「この人は私のことを思って行動しているのではなく、単に親切の押し売りね」と気がつくので、相手から離れることができます。

トラブル2、過剰な感謝を求めるばかりに、身近な相手を巧妙に依存させて不健康な関係に変えてしまう

では、相手がメサイアコンプレックスだと気がつかず、「自分のために親切してくれている」と思い違いをしてしまった場合ではどうでしょうか。

例2、メサイアコンプレックスの彼氏②
彼氏「君が寂しいんじゃないかと思って、終電で駆けつけたよ」
彼女「嬉しい! ありがとう! 寂しかったの!」
彼氏「いいんだよ(心の中:さぁもっと僕に感謝して気持ちよくさせろ~!)」

こちらの彼女は寂しがりやだったのか、終電で駆けつけた彼氏に感謝しています。そして彼氏も狙い通り、まんまと「感謝を受け取る」ことができて嬉しそうですね。しかしこれは2人の価値観がたまたま合っただけにすぎません。

何度も言いますが、メサイアコンプレックスの彼氏が目指しているのは「彼女を喜ばせること」ではなく「自分が感謝されること」です。

ですからこの関係の場合、今後おそらく彼女は彼の餌食――「感謝」を吐き出させるための犠牲者――として依存させられていくことになるかと思います。

このパターンでは、メサイアコンプレックスの人は、他者からの感謝が欲しいばかりに、身近な相手の欠点を指摘して「ダメなやつ」に仕立て上げ、自分に依存させようとするのです。

たとえばこんな感じですね。

例3、メサイアコンプレックスの彼氏③
彼氏「君って本当に、料理もできないし、スタイルも良くないよね」
彼女「……ごめんね」
彼氏「ううん、でも君のいいところは僕にしかわからないから、いいんだよ♪ 君みたいな子と上手く付き合えるのは僕だけだよ」
彼女「こんな私と付き合ってくれてありがとう!」

彼氏は「本当に君は仕方がないな~」などと言いながら面倒を見、感謝させて自分が満足感を得ていますね。

しかし、このような状況がずっと続けば、彼女の方はきっと「私なんか」という思いが強くなって自己評価が下がり、精神的に参ってしまうことでしょう。

彼女を追い詰めることで感謝を受け取ろうとするこの彼氏はやはり問題ありで、健康的な関係とはとても言い難いのです。

このようなことは恋愛関係以外でももちろん起こります。

例4、引きこもりの子供を持つ親
~自宅にて~
「あんたって本当にダメよね」
子供「……」
「そんなんじゃ、世間に出てもやっていけないわよ」
子供「私だって頑張ってるよ!」
「頑張ってる? あんたが頑張ってる姿なんか今まで見たことないわよ! お母さんがいたからこそ、今まで生きてこられたんでしょう! 一人になっても何もできないわよ」
子供「……」
~町内会の集まりにて~
ご近所さん「いやぁ、○○ちゃん、まだ引きこもってるの? 親御さんも大変だねぇ」
「いえいえ、あの子が引きこもりから脱するまで、親として見守ります」
ご近所さん「こんなに優しい親御さんで、○○ちゃんは幸せ者だよ。私が言うのもなんだけど、何が気に食わないのかねぇ……」

このパターンでは、親が子供に「お前は世間ではやっていけない」と言って評価を下げ、心を傷つけています。

その一方、自分は外では「引きこもりの子を見守る優しい親」として振る舞い、ご近所さんから褒めてもらっていますよね。

子供を悪者にして見返り(子供から感謝、ご近所さんからは称賛)を受け取ろうとする形です(この例では子供からの感謝は受け取れていませんが、「お母さんがいたからこそ」と発言するなど、あわよくば受け取ろうとはしていますよね)。

メサイアコンプレックスの克服と、メサイアコンプレックスの人と距離を置くために

メサイアコンプレックスを持っている人は、子供の頃に自分自身が深い傷を負った経験があるとも言われ、突き詰めると「人から認められたいという思い(承認欲求)」が強いことは確かです。

だからメサイアコンプレックスを持つ人は「他者を救いたい」のではなく、「自分が救われたい」のです。

メサイアコンプレックスの人が真に救われるためには、誰かを犠牲にして不健康な形で感謝を受け取ろうとするのではなく、その承認欲求をどこか別の場所で満たす必要があるでしょう。

メサイアコンプレックスを持つ人は

「他者から見返りをもらうこと=自分には価値がある」

「他者から見返りをもらえないこと=自分には価値がない」

という考えではなく、

「他者から見返りがなくても、自分には価値がある」

という考えにシフトしていくことが克服の鍵になりそうです。

また、メサイアコンプレックスを抱えている人が身近にいる場合、あなたがターゲットにされてしまうととてもやっかいです。

「この関係、私が悪者にされてなんかおかしくない?」と思ったら、距離を置きましょう。

ただ、相手が親などのときは、自分でもその関係をおかしいと感じながらも、何がおかしいのか説明できないということもあるかと思います。

そのようなケースでは信頼のできる第三者に相談し、関係をジャッジしてもらいましょう。


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水嶋英美里

水嶋英美里

ライター。文学系の大学院を修了しており、国語科の教員免許持ち。コラムは根拠のないテクニック紹介にならないよう、「なぜこうすれば結果が得られるのか」といった部分まで踏み込んで書くことが得意。猫と文学とカモミールティーを愛する。